出典元:夕刊フジ
【今から始めよう!70代まで働く健康術】
スギ花粉がチラチラ舞い、花粉症の季節が近づいてきた。花粉症は、本来、身体に影響のない花粉に対し免疫が過剰に反応することで、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの症状を引き起こす。だが、「暴走免疫」を抑え過ぎれば免疫力が低下し、流行の新型コロナウイルス感染症や、例年流行ピークのインフルエンザなどに感染しやすくなる。免疫の暴走は困るが、パワーが衰えるのもよくない。そんな免疫バランスを「にごり酢」が整えてくれるという。
「酢は酢酸菌による発酵食品です。一般的な食用酢は精製されて透明ですが、にごり酢は濾過(ろか)されずに酢酸菌や原材料の一部が残っています。にごり酢に含まれる酢酸菌は、免疫細胞を活性化し、アレルギーを抑制する作用があるなど、免疫バランスを整えるために役立つのです」
こう説明するのは、東京農業大学応用生物科学部醸造科学科の前橋健二教授=顔写真。『「にごり酢」だけの免疫生活』(青春出版社刊)の著者で、発酵食品研究の第一人者である。
「にごり酢の中に、生きた酢酸菌がいるわけではありません。酢酸菌の残骸や、発酵過程でできたペプチド(アミノ酸が2つ以上結合した状態)が、免疫細胞のみならず、腸内細菌にも働きかけ、バランスをよくすると考えられるのです」
そもそも酢酸菌の細胞壁の成分「LSP(リポ多糖)」は、免疫細胞を活性化し、刺激を受けた制御性T細胞によってアレルギーを抑制するといわれる。また、腸には腸内細菌が無数にいるが、酢酸菌の残骸はビフィズス菌などの良い働きをする細菌をサポートする可能性がある。ビフィズス菌は酢酸を作り、それが病原性大腸菌による感染症を予防することも報告されている。
「にごり酢を1日大さじ1杯程度、調味料などとして使うと、アレルギー予防や感染症予防以外にも、さまざまな健康作用で役立つ可能性があります。動脈硬化を防いで生活習慣病の改善、カルシウムの吸収率を高めて骨粗鬆(こつそしょう)症予防など、いろいろな働きが期待できるのです」
食用の酢は、7000年前の遺跡から成分が検出された酒と並ぶほど、歴史が古いという。なにしろ、酢酸菌は、酒を酢にしてしまう力を持つ。太古の時代、果実や米などを発酵させた酒が作られ、偶然にも酢が生じ、人類の生活に溶け込んだのかもしれない。
「昔はしょうゆの代わりにお酢が使われていました。にごり酢はすっぱいだけでなく旨みもあります。おいしく味わいながら健康に役立てていただければと思います」
花粉症も新型コロナなどの感染症も予防したい時期だけに、酢の力も借りて健康増進を図ってはいかがだろうか。(安達純子)
■酢の期待される健康作用
□アレルギー症状の予防と改善
□食中毒予防
□高血圧改善
□糖尿病予防
□内臓脂肪型肥満の改善
□疲労回復
□骨粗鬆症予防
※『「にごり酢」だけの免疫生活』から