イルカ連続死、寒暖差の大きい過酷な気象環境が原因か 上越市立水族博物館「うみがたり」(産経新聞)

出典元:産経新聞

新潟県上越市立水族博物館「うみがたり」のイルカ4頭が相次いで謎の死を遂げた問題で、市の検証委員会は、冬と夏の寒暖差が大きいことがイルカに大きな負荷となり、死につながった可能性があるとの検証結果をまとめた。飼育プールもそうした過酷な環境からイルカを守る構造になっていなかったと指摘している。(本田賢一)

【写真】「うみがたり」のイルカプール

 ■相次ぐ謎の死

 同水族館は、老朽化した旧市立水族博物館を建て替え、平成30年6月にリニューアルオープンした。市は新装に合わせ、バンドウイルカ4頭、シロイルカ2頭の計6頭を約9300万円で購入し、水族館の目玉の一つにした。

 ところが、開館から約20日後の同年7月にメスのバンドウイルカ(推定8歳)が死亡したのをはじめ、わずか2年間でバンドウイルカ2頭、シロイルカ2頭の計4頭が謎の死を遂げた。

 市教委は昨年7月、鯨類の専門家などからなる検証委を設置。水族館の設計・施工業者や、水族館の管理・運営を委託されている横浜八景島(横浜市)など、多くの関係者から聞き取り調査を行うなどして2月中旬に報告書をまとめた。

 ■過酷な環境

 報告書やウェブを通じて会見した委員長の吉岡基三重大大学院教授らの説明によると、日本海に面した屋外の飼育プールは冬、寒さが厳しく、上越市特有の海側からの強い冷風が吹きつけていた。一方、夏は最高気温が40度を超えることもあり、冬と夏の寒暖差は大きい。

 飼育プールは水温が年間を通じて一定に保たれるようにしていたものの、冬場の強い冷風を遮るための壁がなく、屋根は開口部が大きくとられ、夏は直射日光がプールに差し込む構造になっていた。

 報告書は「イルカは夏の暑さ、冬の寒さをより強く体感する環境に置かれ、飼育施設の構造上の問題からその差を回避できずに、体温調整や内分泌(ホルモン)調節に影響がおよび、免疫力の低下から死亡に至った可能性がある」と指摘している。

 イルカは呼吸の度に浮上し外気を吸わねばならず、副委員長の鈴木美和日大教授は「冷たい外気を肺に取り入れると、それを暖めるためにエネルギーを使う。こうした状態が長く続くと、イルカが疲弊していく」と説明した。

 ただ、最初に死亡したイルカは同水族館で飼育が始まった30年4月から約3カ月後に亡くなっていることから、別の要因で死亡したとみられるとした。

 ■悲劇を繰り返さぬため

 報告書では、悲劇を繰り返さないための17項目の提言を行った。その冒頭で求めているのが飼育施設の改修だ。

 「飼育施設を天候の影響を受けにくい室内にするのが最適だが(大幅改修が必要になるため)すぐに行うのは難しいだろう。そのため、飼育プールの海側に水面から2メートルの風よけの壁と、夏の直射日光をさえぎる屋根・テントの設置を考えるべきだ」(吉岡氏)

 市教委は「水族館で起きたことは市教委の責任。笑顔があふれる施設になるよう全力を尽くしたい」(柳沢祐人教育部長)とし、市の令和3年度当初予算案に飼育施設の改修費4400万円を計上。飼育施設の北側に冬場だけ防風壁を設置するほか、手動で開閉する日よけを設ける予定だ。

 市教委は現在、2頭のバンドウイルカを飼っている飼育プールの水位を下げ、露出した側壁を防風壁として利用する応急措置を講じている。悲劇が再び起きないことを祈るばかりだ。

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