高橋伴明監督インタビュー「痛くない死に方」で描いた終末医療のリアルと理想の死にざま(日刊ゲンダイDIGITAL)

出典元:日刊ゲンダイDIGITAL

高橋伴明監督(71)が新作「痛くない死に方」で描いたのは、終末医療の現場である。いや応なく訪れる人生の末期、病院では延命治療が当たり前のように施されているが、それでいいのか。在宅で、延命措置を求めない「リビングウィル」の選択肢も含め、理想の死に様を考えさせる意欲作だ。

 ――これが遺作だと、脚本から手掛け、取材もされたそうですね。

「ええ。65歳を過ぎた頃から、死というものを意識するようになってまして。周りで身につまされる話もあり、自分はどのように死にたいのか、本を読み漁っていたら、在宅医療という道があり、リビングウィル、人生会議といった言葉が入ってきた。いざとなったときでは遅い、今やるべきことがあると気づいたのがはじまりでした。そして医学の進歩によって、延命が可能になった一方で、本来あるべき自然な死を迎えられない、死ぬに死ねないような状況に陥りかねないと知って、これはまずいと思ったんです」

 ――そして在宅医療のスペシャリスト、長尾和宏氏に出会い、診療の現場に立ち会ったりしたと。

「長尾先生からは、たくさんのことを学ばせていただきました。手術や延命措置はいらないと病院に意思表明すると『標準治療』の拒絶となり、入院させてもらえなくなったり、受け入れられても、入院患者を2~3週間で退院させないと病院は減収になり、それまでに追い出そうとしているところもある等々。同時に、病院のカルテやマニュアルではなく、患者さん自身を見て、人間として寄り添う先生の姿から、明るい希望のようなものを見た。幸せな死に方というのもあり、それを選べるのだと知りました」

 ――本木雅弘の企画主演作「おくりびと」は納棺師でしたが、本作では看取り人である在宅医を主人公に据えていますね。

「長尾先生の著書『痛くない死に方』『痛い在宅医』が今作の原作で、主人公が師事する奥田瑛二演じる先輩在宅医は、長尾先生をモチーフにさせていただいたものですから。ただ、大変な現場や問題点を描くばかりでは、おもしろくない。死は重いテーマですが、映画ですから楽しくなければならない。その上で深く考えていただけるよう構成しました。最後には理想の死に方の一つを提案したつもりです」

 ――病院のベッドで管だらけにされ、もがき苦しんで「溺れ死ぬ」より天命に従い「枯れ死ぬ」ことを選ぶと。

「はい。宇崎竜童さんに演じていただいたステージ4の肝臓がんを患った登場人物には、いまの自分の理想を投影させてもらってます。末期になっても、川柳を詠んだりして、たまにはうまい酒をおちょこで飲み、一服しちゃったりもする。死が怖くないというと嘘になるけど、痛みを軽減してくれる薬を服用してもらい、弱いところは頼って天命に従う。在宅医や妻に自分の意思を尊重してもらい、尊厳死を遂げていると思います」

 ――奥さま(女優の高橋恵子)と最期の迎え方についてお話ししたりしていますか?

「ええ。夫婦で尊厳死協会に入会してますし、過剰な延命はしなくていいと常々、言ってます。映画でも描きましたが、延命しないと言うと、どこからか身内より往々にして遠い親戚が出てきて、人でなしだというような非難やけちをつけてくるようですけど、そうしたやからにもきちんと対応してくれるんじゃないかしら。もちろん逆の立場になれば、こっちがその役割を全うするつもりです」

 ―――思うに任せない人生、いつ死ぬかも選べないけれども、やれることはあって、それはやると。

「今回の映画も、もともと昨年の夏に公開予定だったんです。新型コロナの蔓延という未曽有の事態があって、延期されていた。でも、理想の俳優たちに出演してもらえ、スタッフの尽力によって湯布院映画祭で上映してもらったりして、こうして晴れて公開が決まった。まあ苦戦するでしょうけど、映画館はコロナ対策に万全を尽くしているし、たまには映画でも、と考える自由や楽しみまで自粛する必要はないと思う。希望はどんな時もあるはずですから」

 映画は、東京・シネスイッチ銀座でロードショー中。

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