通行者や近隣住民のクレームは決して甘く診てはいけない【73歳・交通誘導員 哀愁の日々】(日刊ゲンダイDIGITAL)

出典元:日刊ゲンダイDIGITAL

【73歳・交通誘導員 哀愁の日々】#7

 交通誘導員がつねに恐れていることがある。それはクレームである。ドライバーや近隣住民のクレームは対応をひとつ間違えると大ごとになってしまうからである。こんなことがあった。

 ある日、ガス工事現場に行くと、ガス工事会社専従の女性隊長が私の顔を見るや、こう声をかけてきた。

「柏さん、つかぬことを聞くけど、〇日の千葉の現場で犬を連れたお年寄りとトラブルにならなかった?」

 心あたりは全くない。「どういうことですか?」と聞き返した。すると隊長は顔をしかめて「大きなクレームがあったのよ」と事情を話し始めた。

 その現場では丁字路の突き当たり中央でガス工事が行われていた。道幅が狭いので車はすれ違いができないため、3方で車両通行止めとなった。自転車や歩行者は通れないこともないが、対応は工事の進捗状況次第ということになった。工事箇所にダンプが横づけされれば自転車・歩行者の通行もままならなくなるからだ。

 4人の警備員のうち工事現場付近に1人、他の3人が工事現場に向かう3方向の道路に通行止めの看板を立てて立哨した。私は立哨の1人になった。クレーム騒動を起こした隊員は50すぎのH田。私とは別の箇所で通行止めの立哨をしていた。

 夕方少し前だったようである。そこへ、子犬を連れたお年寄りが通りかかった。お年寄りはH田に「ここ、通れるかい」と聞いた。H田は三十数メートル離れている工事現場をチラッと振り返り「通って通れないことはないですが、迂回していただければありがたいのですが……」と答えた。すると、そのお年寄りは「なんなんだよ、その言い方は。通れるか通れないか、一体どっちなんだ」とキレてしまったという。

 通行止め箇所には通行止め看板の他に工事案内の看板も立ててあり、施工発注会社名と1次下請けの担当者名と電話番号も書いてある。その後、怒りの収まらないお年寄りは施工発注会社に電話してクレームを強硬に申し立てたようだ。

 ちなみに、実際に工事をしていたのは2次下請け業者である。そのクレームは1次下請けから2次下請けに回ってきた。2次下請けの親方は私の前で「通してやれるんだったら、通してやればいいんだよ」と不機嫌そうに話していた。その顛末を含めた報告書を書かなければならない親方にとって、問題を起こした警備員は「役立たず」であろう。こういう場合、お年寄りがいわゆる「クレーマー」なのかどうかは関係ないのである。親方にしてみれば、クレーム対策のために高い金を払って警備員を雇っているのだ。H田は以降、その会社の現場には出入り禁止となってしまった。

 以前、新規入場(初めての現場)の研修で監督から聞いた話がある。茨城県の工事現場で交通誘導員がトラブルになった女性ドライバーに忌々しそうに「ババア、早く行けよ」と小声でつぶやいたという。それを聞きとがめた中年女性の猛抗議によって、なんとその日の工事は中止になった。こうなると業者の金銭的な被害も大きくなる。

■「砂利のせいだ」と市役所に訴えた人も

 本当に些細なことでクレームは発生する。私の体験したもうひとつのクレームを紹介しよう。

 ある鉄道沿線の大規模工事現場でのこと。工事車両の出入りによる泥はねなどを防ぐため、付近に大量の砂利をまいた。すると、通りかかった自転車がパンクした。乗っていたお年寄りは「砂利のせいだ」と市役所に訴えた。結果、なんと2週間も工事がストップしてしまった。現場監督は「交通誘導員が適切な処理をしてくれれば」とぼやくことしきりである。

 交通誘導員経験者なら、大なり小なりクレームを受けなかった人はいないだろう。大問題になるケースも少なくないのだ。「たかがクレーム、されどクレーム」を肝に銘じておかなければならないのだ。

(柏耕一)

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