出典元:日経ビジネス
新型コロナウイルスの影響で中国の労働市場に逆風が吹きつける中、2021年に卒業を予定する学生向けの就職活動が例年よりも早くスタートした。
【写真】2020年4月に中国・武漢で開催された採用イベントの様子。コロナ禍の中でも職を求めて多くの人が参加し、検温など感染対策を取りながらの開催となった
第2四半期(4~6月)に実質GDP(国内総生産)がプラスに転じるなど、主要国が軒並みマイナス成長に陥る中での中国経済の回復力が際立ってはいるが、全体での新規雇用者数は伸び悩んでおり、「雇用なき復活」(2020/7/16付 日本経済新聞電子版)とまでいわれている。
確かに、統計データに表れているようにマクロ的に厳しい状況が続いていることは確かだ。しかし、大学生の就活現場では新型コロナの影響で大きな地殻変動の兆候が表れ始めている。
●雇用の大幅拡大に動くIT大手企業
「BAT(バイドゥ・アリババ・テンセント)やバイトダンス(字節跳動)などのIT大手を受けます」
私の研究室の学生に就職希望先を尋ねると、予想外の答えが返ってきた。「予想外」というのは、過去の教え子の中で、民間IT企業に就職したケースはほとんどなかったからだ。
その背景に、好業績を受けた雇用の拡大がある。新型コロナの感染拡大でほとんどの産業が大きな打撃を受ける中、IT企業の多くがコロナを逆手に業績を伸ばしている。例えば、ウィーチャットを運営するテンセントの2020年第2四半期(4~6月)の決算を見ると、売上高が前年同期比29%増となる1148.8億元、純利益は同28%増の301.5億元であった。
そのテンセントは大学における秋期の採用活動で、過去最高となる5000人超(前年比43%増)を採用予定だ。TikTokを運営するバイトダンスにおいても秋期だけで6000人を採用する。大学内部で出回っている就職先企業情報リストにもIT大手の名前がずらりと並び、インターネット系、科学技術系の企業が全体の半数以上を占める。
私が教える対外経済貿易大学の学生に人気の就職先が、銀行や証券会社などの金融業界だ。全体的には、今年の採用人数は去年よりも拡大しているが、求める人材が変化している。金融業界を志望する学生によると、「理工系学生を対象としたフィンテック人材の求人が多い」という。
新型コロナにより社会全体のデジタル化が進み、それに伴い、就活の中心となる業界や企業が求める人材にも変化が表れ始めているようだ。