出典元:日経ビジネス
新型コロナウイルスの影響により、多くの企業でリモートワークが導入されました。
リモートワークを試してみたら、「意外とオンラインでも大丈夫なんじゃない?」と感じた人が多かったようで、「だったら、わざわざオフィスを構える必要ないね」とオフィス不要論も飛び出しました。
【宇宙兄弟】ビンセントの冷静さは、救いではあるけれど……/35巻#326「淡々と」
オフィスをなくせば、会社は家賃や通勤費の負担を減らすことができ、働く人も通勤時間を節約できます。「これを機に働き方をリモート中心に変えて、オフィスを縮小しよう」という方針を打ち出した会社も多数ありました。
しかし、話はそれほど単純ではない、と私は思っています。
なぜなら、環境や刺激に対する感じ方は、人それぞれ違うからです。つまり、リモートワークの環境を「効率的で便利」と捉える人もいれば、「孤独で不安」とか「刺激が少なくて退屈」と感じる人もいます。
ストレス理論をベースに研究されたFFS理論で現状を考察すると、日本人のなんと約30%前後が、コロナ禍でのリモートワークに何らかのストレスを感じている、と考えられます。しかも、リモートワークでストレスを感じる理由は、個性によって異なります。
こうした個々の状況を考慮せず、一律にリモートワーク中心の働き方に切り替えてしまえば、どうなるでしょうか。生産性が上がるどころか、ストレスをため込んで潰れてしまう人が出てくるかもしれません。
そうならないためにも、リモートワークの良い面だけでなく、リモートワークの負の面、つまりその環境が働く人に与えるストレスにも目を向けていただきたいのです。
今回は、個性によって異なる、リモートワーク環境でのストレスとその対処法を見ていきたいと思います。
※FFS理論(開発者:小林 惠智博士)は、5つの因子とストレス状態から、その人が持つ潜在的な強みを客観的に把握するものです
ストレスとは、もともと、「刺激と、それに反発する力の両方をストレスと呼ぶ」ものです。刺激に対する応力が働くから、人間は健康でいられます。よって、「適度な刺激」(ユーストレス eustress)は必要なのです。
ストレスは、「耐える」のではなく、しなやかに「受け流す」ことが大切です。
ところが、人によっては、リモートワークの環境が「過度の刺激」(ハイバーストレス)となり、受け流せなくなっているのです。
●弁別性は「リモート万歳!」
このところよく耳にするようになったオフィス縮小論ですが、そうした方針を打ち出す企業には、ある共通する特徴が見られます。
それは、FFS理論でいうところの「弁別性」の高い人が、経営層に多いということです(詳しくは、関連記事「褒めてくれない“冷たい上司”とストレスなく付き合うには」をお読みください)。
「弁別性」の高い人は、リモートワークが苦になりません。合理的に無駄なく進めようとする彼らは、リモートであろうとリアルであろうと「やることは同じ」(つまり、最短でゴールにたどり着こうとする)ので、環境が変わっても違いがないのです。
むしろ、リモートのほうが通勤時間を節約できるし、周りからの邪魔が入らず仕事に集中できるとなれば、「リモートのほうが、都合がいい」。リモート万歳! というわけです。
「弁別性」の高い人が経営層に多ければ、直接的、間接的なコスト削減につながるリモートワークに全面的にシフトしようとするのも、当然のことと言えます。
では、最前線で働く一般社員はどうでしょうか。
FFS理論を基にした考察や、実際に企業で働く人にヒアリングを行った感触から、日本人に多い「受容性」「保全性」が共に高い人と、「拡散性」の高い人は、コロナ禍でのリモートワークでかなりストレスをためている、と考えられます。
「受容性」の高い人は、柔軟に相手を受け容れ、関係する周りの人の面倒をよく見て、その人の役に立つことに喜びを感じます。