菅政権の最注目政策「デジタル庁」に待つ茨の道(現代ビジネス)

出典元:現代ビジネス

菅義偉官房長官が「デジタル庁」創設を検討――9月6日に第一報が流れた直後から、筆者の周辺では「どの省にぶら下げるのか」「長官はだれになるのか」の話題が飛び交った。早速、経産省、総務省、内閣府、内閣官房などの様子を探ったのだが、「話せることは何もありません」と素っ気ない。

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 新型コロナウイルス対策が引き金になって、これまで日本政府が標榜してきた「世界最高水準の電子政府」が掛け声に過ぎなかったことが露呈した。1人10万円の特別定額給付金の支給遅れと混乱、感染者情報管理システム「HER―SYS」や感染者接触確認用のスマホアプリ「COCOA」の機能不全、小中高校のオンライン授業で明るみに出たネットワーク環境の未整備などだ。

 こうしたタイミングだっただけに、各省庁が持つデジタル関連の部局を集約して「デジタル庁」を創設する、という構想は時宜を得たものと受け止められた。ITの専門家ですら、フェイスブックやツイッターなどで「大いに歓迎」と公言している。新内閣の目玉施策として、まずは成功といったところだろう。

 「デジタル庁」と似たような話はこれまでに何度もあった。古くは1985年の電気通信事業法と電電公社民営化の際、次は2000年の省庁再編の時だ。「情報省」に一元化したらどうか、いやそれではスパイの巣窟みたいなので、「情報通信省」はどうか……等々、出ては消え、消えては出た構想の既視感がある。

 おそらく「デジタル庁」の基盤となるのは、まずは総務省の旧郵政セクション(情報流通行政局、総合通信基盤局、国際戦略局およびサイバーセキュリティ統括官)と経産省の商務情報産業局だ。

 しかし単にオフィスを一つにするだけでは同床異夢、呉越同舟、船頭多くしてのコトワザ通りになってしまう。一方、組織をバラバラにすると施策の連続性が保てるか懸念される。予算の組み立て方、施策の実施方式など、各省が培ってきた文化があるし、若手官僚の士気がダウンすることにもなりかねない。

 5年ほど前、あるIT関係の民間団体が総務・経産大臣に「情報通信省の創設」を提唱したところ、「まずはあなたたち民間で先行してやってください」と言われた、との裏話もある。政治家の側も官僚の縦割り意識に染まってしまうのは、官僚の協力を得るためにやむを得ないのか、それとも洗脳されてしまうのか、いずれにせよ「脱・縦割り」は口で言うほど簡単ではない。

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