複数の報酬文書、効力の有無焦点 ゴーン容疑者再逮捕へ 東京地検特捜部(産経新聞)

日産自動車の前会長、カルロス・ゴーン容疑者(64)の報酬過少記載事件で、東京地検特捜部は勾留期限の10日、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)容疑でゴーン容疑者らを再逮捕する。事件では、ゴーン容疑者が退任後に受け取ることにした報酬に関する覚書など複数の文書の存在が浮上。特捜部は退任後の報酬が確定していたことを示す証拠とみて追及するが、ゴーン容疑者らは「効力はない」と容疑を否認し続けている。

 ■3種類の文書

 関係者によると、ゴーン容疑者は東京・小菅にある東京拘置所の広さ3畳程度の独房に勾留されている。健康状態に問題はないが、再逮捕される可能性があることを伝えられると、不満げな表情を見せたという。

 ゴーン容疑者は役員報酬の開示が義務化された平成22年から、高額報酬への批判を避ける目的で、実際の年間報酬約20億円のうち約10億円を有価証券報告書に記載し、残りをコンサルティング料などの名目で退任後に受け取ることを計画したとされる。

 特捜部はゴーン容疑者が約90億円にも上る未払い分の報酬を退任後に確実に受け取るため複数の覚書や文書を作成したとみている。

 金商法は、役員報酬を将来受け取る場合でも、金額が確定した時点で各年度の有価証券報告書に記載するよう義務付けており、ゴーン容疑者の退任後の受領額が確定していたかどうか、つまり覚書の効力の有無が最大の焦点となっている。

 関係者への取材でこれまでに明らかになっている退任後の報酬に関する文書は(1)compensation terms & conditions(報酬契約条項)(2)employment agreement(雇用契約)(3)各年の報酬一覧表-の3種類。いずれも英語で表記されている。

 ■自ら文書にサイン

 (1)の報酬契約条項は、11年にゴーン容疑者が日産の最高執行責任者(COO)に就任した際、日産との間で交わされた報酬契約に基づいて算出された約20億円の報酬額と、未払い額などが記されている。22年から2年分ずつ少なくとも2通作成され、ゴーン容疑者と最側近だった秘書室長のサインが書かれている。

 特捜部は自身でサインしていることから効力があり、ゴーン容疑者が退任後の報酬確定を認識していたことを示す決定的証拠とみている。

 だが、ゴーン容疑者は自身のサインがある文書の存在を認めた上で「内容を確認したという意味でサインしただけだ」と供述。「希望額」「新しいCEO(最高経営責任者)が支払いを拒否するかもしれない」などとして「退任後の報酬額は確定しておらず記載義務はない」と訴える。

 ■「確定していない」

 (2)の雇用契約はゴーン容疑者が退任後、コンサルティング業務や競合他社へ行かないなどの契約内容と日産側が支払う契約料が明記されている。ゴーン容疑者の側近で前代表取締役のグレゴリー・ケリー容疑者(62)が22年から毎年作成し、ケリー容疑者と西(さい)川(かわ)広人社長(65)のサインがあるという。

 ケリー容疑者は調べに「(表向きの報酬を半減させた)ゴーン氏を引き留めるために日産側の誠意を見せるのが目的。内容は検討段階で未確定だった」と供述。さらに「社内の正式な手続きを経ておらず効力はない」と主張している。

 ただ、西川氏は23年から、ケリー容疑者は24年から代表権を持つ取締役に就任。関係者によると、同社では代表取締役2人の了承で正式文書とするなどの内規があるといい、有効性を持つ可能性もある。

 (3)の一覧表は、22年以降のゴーン容疑者の報酬総額と報告書への記載額、未払い分の累積額をまとめたもの。ゴーン容疑者によるとみられる手書きの修正痕があったことが明らかになっている。だが、これについても、ゴーン容疑者は「もらって当然の額だが、確定はしていない」と供述しているという。

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