横浜バス7人死傷事故 原因は睡眠時無呼吸症候群か(産経新聞)

横浜市の国道で10月、信号待ちの乗用車と市営バスに、後続の神奈川中央交通の路線バスが追突して7人が死傷した事故で、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)容疑で逮捕されたバス運転手の男(50)=釈放=が「事故現場から約2キロ手前のバス停『高島町』を過ぎて以降意識を失った」との趣旨の話をしていることが9日、捜査関係者への取材で分かった。事故は11日で発生から2週間。男は昨年、睡眠時無呼吸症候群(SAS)と診断されており、県警は病気と事故原因の関連を調べている。(河野光汰、浅上あゆみ)

 事故は同月28日午後9時20分ごろに発生した。同市西区桜木町の国道16号で信号待ちをしていた乗用車に追突し、乗客の高校1年、秋場璃雄(りお)さん(16)=同市都筑区=が頭などを強く打って死亡。母親(48)も重傷を負うなど、男と乗客の計6人が重軽傷を負った。

 ■発車の5分後に

 男は始発の横浜駅東口を出発後、通常のルートを走行していた。捜査関係者によると、現場のカメラからは事故現場の1キロほど手前から蛇行運転する様子が確認されたが、車内の乗客らが混乱しているような様子は確認されなかった。

 出発から約5分後、バスは事故現場から約200メートル手前の高架下の支柱に接触し、時速40キロほどのスピードを保ったまま前方の乗用車に追突。ブレーキ痕は残されていなかった。

 男は事故後、同社に「貧血のような状態になった。意識を失って事故を起こしてしまった」などと説明。同社も国土交通省関東運輸局に「運転手が意識を失った」などと事故原因について報告していた。

 同社は事故後、被害者らに陳謝した上で、男の健康状態に問題がなかったかなどについて調査を開始。同31日に男が昨年、SASと診断されていたことを発表した。また、同社のバス運転手の約1割の313人がSASであると診断されていることも明らかにした。

 ■一般人とほぼ同じ

 SASは就寝中に呼吸停止が繰り返され、日中に強い眠気や集中力低下を引き起こすことがある。一方、同社は医師の所見に基づき、乗務に支障がないと判断していた。

 SASと事故の関連について、睡眠関連疾患の治療を専門とする大阪回生病院睡眠医療センターの大井元晴センター長(70)は「病気の程度にもよる」と前置きした上で、「適正な治療を施していたのであれば(運転については)問題ないと思われる」と話す。

 大井センター長によると、睡眠時に気道へ空気を送り込む医療器具「CPAP(シーパップ)」を用いて無呼吸状態を抑える治療を行っていれば、症状をほぼ抑えることができるといい、「交通事故を起こす確率は一般の人とほぼ同じになる」。一方、適切な治療がなされていなければ日中、突然眠気に襲われる患者もおり、無治療の場合、事故を起こす確率は非罹患(りかん)者の2~3倍に上るという。

 ■管理体制に問題は

 また、同社のバス運転手の約1割がSASと診断されていたことについては、「女性の2割、男性の5割がSASであるとの統計もあり、特別多いというわけではない」とする。さらに、「交通事故でSASが問題になることは多いが、事故前の睡眠時間の問題が、より重要になってくるのではないか」とも指摘している。

 関係者によると、男は3段階あるSASの程度について「中程度」と診断されており、昨年の診断後、医師からすすめられる形でCPAPを使用して治療していたという。重大な結果を引き起こした今回の事故。同社は遺族への謝罪などについて、「現在、接触を試みている最中」とした上で、男への聞き取りなどを通じて事故原因を究明するという。

 県警は8日、男を現場に立ち会わせて実況見分し、男が意識を失った地点などを確認。事故当時の詳しい状況を調べるとともに、運行会社の管理体制に問題がなかったかなどを精査する方針だ。

 ■睡眠時無呼吸症候群 眠っている間に無呼吸状態が繰り返される病気で「Sleep Apnea Syndrome」の頭文字をとって「SAS(サス)」と呼ばれる。10秒以上、気道の空気の流れが停止した状態を無呼吸とし、無呼吸が1時間当たり5回以上あれば、SASと診断される。症状は人によって異なり、重症になると昼間に強い眠気を催すなど、日中の活動に影響が出ることもある。国内のSAS患者数は400万人とも言われているが、自覚症状がない人も多く、潜在的な患者数はさらに多いとみられる。

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