ポスト安倍は「岸破義信」(きしばよしのぶ) 加藤勝信総務会長急浮上(産経新聞)

出典元:「岸破義信」の顔ぶれ

自民党内で「ポスト安倍」の顔ぶれが変化した。衆院当選6回ながら党三役に抜擢された加藤勝信総務会長(62)が急浮上したためだ。安倍晋三首相(64)からの禅譲を視野に入れる岸田文雄政調会長(61)、9月の総裁選で党員票の45%を獲得し「非安倍」の受け皿となる石破茂元幹事長(61)、ワンポイントリリーフとして菅義偉(すが・よしひで)官房長官(69)の名も挙がる。それぞれ一文字を取り、人呼んで「岸破義信」(きしばよしのぶ)-。

【グラフ】「ポスト安倍」にふさわしい人物は?

 ■急浮上

 「常に高みを見据えながら進めていきたい」

 加藤氏は先月の総務会長就任後の記者会見で「ポスト安倍」を目指すかを問われ、こう答えた。加藤氏は慎重な発言で知られるだけに、党内で「意欲があると踏み込んだ」と、驚きとともに受け止められた。

 加藤氏が「ポスト安倍」に数えられる最大の要因は首相との距離の近さで、首相が退任後に「キングメーカー」として影響力を発揮するのが大前提だ。

 平成24年の第2次安倍政権発足以降、加藤氏は官房副長官、厚生労働相などの要職を歴任し、調整能力が評価されてきた。竹下派(平成研究会、55人)に所属しているが、首相との個人的なつながりが深い。加藤氏は首相の父・安倍晋太郎元外相の最側近の一人である加藤六月元政調会長の娘婿だ。六月氏と晋太郎氏の妻同士も「姉妹」と呼ばれるほど親しく、首相と加藤氏は家族ぐるみの付き合いだ。

 島根県議会議長を祖父に持つ加藤氏は、同県を地元とし竹下派の参院側に影響力がある青木幹雄元参院議員会長(84)と良好な関係にある。首相の出身派閥である細田派(清和政策研究会、96人)には衆目の一致する総裁候補がいないともいわれており、2派閥の「統一候補」とささやく向きもある。

 ただ、加藤氏は「竹下派というより安倍派」(竹下派ベテラン)との声もあり派内で存在感が高いとはいえない。現状では、竹下派で茂木敏充経済再生担当相(63)を次期首相候補に推す声が有力だ。

 ■政調改革で実績

 岸田氏は早くから首相からの「禅譲」狙いとされ、9月の総裁選への出馬を見送った。不出馬表明が遅れたことで首相側近らの不満の的となったが、政調会長を続投し、総裁候補として踏みとどまった。「次は手を挙げたい」と明言もしている。

 岸田氏は衆院当選9回で経験があり、岸田派(宏池会、48人)を率いる派閥領袖でもある。岸田派の若手は加藤氏の台頭に危機感を募らせているものの、岸田氏が細田派の支持を得られれば議員票で有利に立てる。

 ただ、産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)の10月の合同世論調査では、「次の首相」にふさわしい候補として岸田氏を挙げたのは7・3%で、小泉進次郎厚生労働部会長(37)の30・3%、石破氏の27・7%に大きく水をあけられた。地方行脚や政調改革で実績を挙げ、知名度を上げることが課題となっている。

 ■「反安倍」受け皿

 石破氏は総裁選で党員票の45%を獲得し、一定の存在感を発揮した。ただ、議員票では、24年総裁選の際に首相と一騎打ちとなった決選投票よりも減らしてしまった。今回の総裁選で石破氏を支持した竹下派参院議員との勉強会も検討したが、断られた。メディアなどで政権批判を繰り返し「反安倍」「非安倍」路線を鮮明にしている。

 石破派のベテラン議員は「大きなへまをしない限り、石破氏が本命だろう」と強気だ。ある自民党議員も「来年の参院選で自民党が敗れれば、衆院側に『首相やその後継者では、次の衆院選を戦えない』との空気が出かねない。選挙の顔として別路線の石破氏を担ぐ動きがありうる。総裁選で石破氏を支持した小泉氏と組めば、さらに強い」と話す。

 総務相退任後、首相に苦言を呈してきた野田聖子衆院予算委員長(58)はグループ作りを目指したが難航しており、一歩後退した。

 ■ダークホース

 「大穴」として浮上するのが菅氏だ。政権の大番頭として危機管理に当たり、安定政権の功労者と位置づけられている。菅氏は無派閥議員の間に重層的にグループを作り、約40人が参画している。二階俊博幹事長(79)との関係も良好といえ、二階氏が周囲に「次は菅さんでもいいんじゃないか」と語ったこともある。

 自民党内では、この4人を中心に、総裁選出馬の意欲を隠さない河野太郎外相(55)や、知名度が高い小泉氏、茂木氏らが割って入るかどうかといった構図になりつつある。

 かつて、後継候補を示す造語として佐藤栄作元首相の「三角大福中」(さんかくだいふくちゅう。三木武夫、田中角栄、大平正芳、福田赳夫、中曽根康弘の各氏)、中曽根氏の「安竹宮」(あんちくぐう。安倍晋太郎、竹下登、宮沢喜一の各氏)、小泉純一郎元首相の「麻垣康三」(あさがきこうぞう。麻生太郎、谷垣禎一、福田康夫、安倍晋三の各氏)といった言葉が生まれてきた。これらは、政治家が頂点を目指し切磋琢磨(せっさたくま)してきた歴史でもある。「岸破義信」から誰が抜け出すのか。(政治部 沢田大典)

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