初めて描かれた在原業平の一代記 後編(日経ビジネス)

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出典元:日経ビジネス

古典『伊勢物語』は、和歌を中心に125章段で構成された歌物語。「むかし男、ありけり」と始まる物語の主人公は在原業平であるという説が有力ですが、実のところ、詠みこまれている歌の中には業平作ではないと思しきものも含まれています。一行と和歌だけの段などもあり、つかみどころのない箇所も目立ちます。

【写真】作家 高樹のぶ子氏 × 万葉学者 上野誠氏

 『小説伊勢物語 業平』では、業平の歌だけを抽出し、業平が15歳で元服してから56歳で人生の幕を下ろすまでを時系列に並べました。その年代年代に出会い、影響を受けた女性との初々しい恋、華やかな恋、艶めいた恋、奔放な恋、切ない恋、哀れな恋、禁断の愛、そして永遠の愛……。

 光源氏のモデルともいわれる業平の華麗な恋の遍歴を軸に、阿保親王を父に持ち、雅な業平の生涯が、そして母への愛、友情、主従間の信頼関係など多岐にわたる人間関係の極意が繊細なタッチで描かれています。

 作者である高樹のぶ子氏と万葉学者の上野誠氏の対談を2回に分けてお届けします。前編は「伊勢物語を小説化するために」というテーマでした(関連記事参照)。後半のテーマは「雅に生きるとは?」です。(構成=丸山あかね)

* * *

「起きもせず寝もせで夜を明かしては春のものとてながめ暮らしつ」

 昨夜、私はあなたの傍で、起きているのか寝ているのか分からぬまま朝を迎えてしまいました。そぼ降る雨のせいでしょうか、それともあなたが春の雨のように私の中に入ってこられて、起きることも寝ることもかなわぬ甘い酔いで縛ってしまわれたのか。今あなたから離れてもあの雨は、こうして空から、いえ私の身内でも、降り続いております。春の雨とはこのように長く、いつまでも終わりのないものと知ってはいましたが、切ないものですね。

●雅に生きることの大切さを現代に伝えたい

上野誠氏(以下、上野):『小説伊勢物語』は、業平という一人の男の成長小説でもあるわけですよね。近代の小説というのは、夏目漱石がその代表なのですが、悩める人を悩んでいるように書いている。僕ら古典をやっている者から見ると、日本文学が最も暗い時代は近代だという気がします。

高樹のぶこ氏(以下、高樹):アハハ。そうかもしれませんね。

上野:ただし暗い顔をしている人が苦悩しているという発想って浅いと思うんですよ。深刻に悩んでいる人が明るく振る舞っていることだってあるだろうし。それで言うと『小説伊勢物語』は奥が深い。業平の表面的な感情に触れるだけでなく、もっと本能的な部分に迫っている。それは言葉の妙だと私は思うのです。たとえばスタートを切る「初冠」の章。元服したばかりの業平が奈良の春日の里へ鷹狩りに出かけたところ、見目麗しい姉妹を見かけ、それぞれの娘に歌を贈ったという件です。

高樹:2人共に贈るというのが業平らしいところ。

●業平は「言葉の穂先で撫で表す」力を持っていた

上野:通常、姉妹が登場する場合には妹だけが美しいという展開になっているのですが、さすが業平といったところですね。それで「春日野の若むらさきのすりごろも しのぶの乱れかぎりしられず」という歌と、「みちのくのしのぶもじずり誰ゆえに みだれそめにし我ならなくに」という歌を詠む。そのあとに古典の伊勢物語では「昔の人はこのような雅な心を持っていた」と続きます。では、その「雅な心」とは何か? という話になってくるわけなのですが、これが近代小説家であるところの高樹さんの手にかかると……。

高樹:狩りに同行し、歌を届けるよう命じられたのは業平と同じ乳母に育てられた5歳年上の憲明ですが、彼が業平の歌の才能に感服したというところですね?

上野:そうです。憲明の心の声に私は脱帽してしまいました。高樹さんはこう記しています。「このお方は、自らのとぼしい体験などとは関わりなく、成人や老人、いえ女人の心の動きまで、言葉の穂先で撫で表すお力をお持ちのようだと。」。「ようだと。」でこの章が終わっているということにもしびれますが、なんといっても「言葉の穂先で撫で表す」という表現にゾクゾクっと(笑)。

高樹:あれは意図して官能的に。

上野:そうでしょうとも。私が開成中学の教師なら「女性を口説くときには、言葉の穂先で撫でまわすようにね」と強調して伝えます(笑)。読者は男と女の仲を和らげる術を学習するとともに、業平という男の心の豊かさを理解し、この少年はこれからどんな恋愛を通して、どんな男になっていくのだろうという期待が一気に高まるという。これはもうお見事としか言えません。

高樹:恐れ入ります。

上野:『小説伊勢物語 業平』をテキストに用いた開成中学の先生も素晴らしい。これはよく僕が学生に言うことなのですが、古典ほど最新のテキストで学ばなければダメなのです。古い解釈のテキストでは現代人の心にフィットしませんから。それにしても実に画期的で、令和の伊勢物語は性教育も担うと言えそうですね。

高樹:業平が男として成長していく上で恋愛は欠かせないものですが、闇雲に女と出会えばいいというものではないだろうということで登場する女性の順序にこだわりました。

上野:確かに大事なところです。2番目に登場するのは、西の京の女ですね。

高樹:母親と同年代である「西の京の女」が業平にとっての決定的な女だと思ってます。

 業平は彼女から、あらゆることを教えられたのだと。

上野:あらゆることを!

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