出典元:日刊ゲンダイDIGITAL
日本相撲協会の幹部たちも、目を丸くしているに違いない。大相撲11月場所は2横綱が初日から休場、2大関も途中休場、新型コロナウイルス感染防止で観客はまばらと、なんとも寂しい場所だったが、テレビの中継放送は大いに盛り上がっていた。
世帯視聴率は初日の13・3%からじりじりと上がりはじめ、千秋楽はとうとう20・5%と大台を突破、貴景勝が決定戦で優勝を決めた瞬間最高視聴率は24・3%を記録した。週間視聴率ランキングにも、15日間すべてが20位以内に入った。
「高視聴率の理由ははっきりしています。白鵬と鶴竜が出てないからですよ。コロナ禍前の今年初場所も好調だったんですが、この時も2横綱は中盤から途中休場でした。これに比べて、3月春場所は千秋楽に2横綱がぶつかり、白鵬が優勝したら、視聴率は12・3%と14日目に比べて3ポイント近くも急落しました。肘打ちのような汚い手を使ってでも勝とうとし、負けが込むとすぐ休場で逃げるモンゴル横綱に、相撲好きほどウンザリしているんです。彼らが出ないなら、テレビ観戦しようかなとなるんでしょうね」(大相撲リポーター)
11月場所も前頭17枚目の志摩ノ海が最終盤まで大関に食い下がったが、今年は5場所(5月の夏場所は中止)のうち2場所で幕尻力士が優勝し、翔猿、炎鵬らの小兵が多彩な技で健闘するなど、相撲の面白さを味わわせてくれた。
スー女(相撲ファン女子)たちがリモートワークやリモート授業で、家で相撲中継を見ることが多くなっていることも、視聴率を押し上げているのかもしれない。彼女たちのお気に入り力士は、竜電、遠藤といったイケメン・さわやか系で、11月場所でも活躍した。もう、勝てばドヤ顔のおっさん横綱は「ムリ、ムリ!」なのである。
横綱審議委員会が白鵬、鶴竜に「注意」を決議し、「来年初場所に出てこなかったらもう後はないよ」と最後通告したのも、相撲人気のためにはかえって邪魔になっていると考え始めたからだろう。
で、来年1月10日からの初場所だが、新型コロナウイルス第3波の感染拡大に歯止めがかからず、芝田山広報部長は「今年の5月場所みたいになる可能性はある」という。中止だ。開催しても、観客は両国国技館の収容人数の半分の5300人しか入れない。
「そうはいっても、中止になれば、相撲協会は観客半分でも約5億円ある入場料収入とNHKからの放送権料約5億円を失うので、有力部屋でクラスターでも発生しない限り、開催に踏み切るでしょう。その時、相撲協会とNHKにとって最悪なのは、貴景勝が綱とりに失敗して、白鵬に優勝されてしまうこと。白鵬は居座り続け、相撲中継の視聴率はがた落ちですからね」(前出の大相撲リポーター)
年明け恒例の東京・明治神宮で行われる横綱の奉納土俵入りも、来年は行わないという。2横綱は初場所に出ないまま引退でもいいんじゃないか。
(コラムニスト・海原かみな)