受け継がれる「金馬の誇り」 三遊亭金時「重い看板を下ろさせてやるのも親孝行かな」 三遊亭金馬「ご隠居さんの気持ちで、死ぬまで好きな落語を」(夕刊フジ)

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出典元:夕刊フジ

今月、四代目三遊亭金馬が、次男の三遊亭金時に金馬の名を譲り、自身は二代目金翁を名乗ることになった。

 噺家(はなしか)生活80年目、91歳の四代目。落語との出合いは尋常小学校1年生の夏休み。蓄音機から聞こえてきた1枚のSP盤レコードだった。

 「柳家金語楼の兵隊落語。『陸軍歩兵二等卒、山下ケッタロ~』というのが面白くてね。聴いているうちに覚えちゃったんですよ。高学年になる頃までには春風亭柳橋(六代目)や柳家三亀松(初代)のネタをレコードで覚えていましたよ」

 12歳で先代の三代目金馬に入門。戦後初の二ツ目で小金馬を名乗り、テレビ創成期のコメディー番組「お笑い三人組」(NHK)に江戸家猫八(三代目)、一龍齋貞鳳らと出演、テレビタレントのはしりとして国民的な人気者に。

 「師匠(三代目)から最初は『芸人は売れなきゃダメなんだよ』なんて言われたけれど、そのうち『お笑い三人組は一生できるもんじゃない。噺家は死ぬまでやれるんだから落語をちゃんと稽古しろ』って。ちっとも稽古しなかったけれどね」

 番組は10年続き終了。三代目が亡くなり、3年後に金馬を継ぐ話になり、荷が重いと悩んでいたとき、五代目柳家小さんに相談。

 「目白の師匠(小さん)は『このまま稽古したら、落語がうまくなるのかよ。(金馬に)なっちゃえば何とかなるんだ』って、あのときは元気づけられました」

 半世紀以上にわたり金馬の名跡を守り続けた。

 さて五代目金馬を継ぐ金時。幼い頃から身近に落語があったものの、少年時代は野球に夢中。

 「名門、堀越(高校)でプロ入りを目指したんですが井の中の蛙でね。レベルの違いを見せつけられて愕然(がくぜん)。マネジャーになってからの寮生活は人生の転機のひとつといえるかもしれません」

 東海大学進学後、入ったゼミの教授が無類の落語好き。「落語家はいいぞ」と背中を押されたことが、噺家の世界に入るきっかけになった。

 「(弟子入りは)小さん(五代目)師匠を考えていたのですが、小さん師匠が父に『オレも孫(柳家花緑)を育てるんだから自分のところで育てろ』と言うんで、四代目(父)の下で修業が始まりました」

 二ツ目の頃、同じ二世落語家の古今亭志ん朝から「声の幅が狭いから邦楽をやったほうがいいよ」と助言を受けて常磐津を習い出した。

 「義太夫も役に立ちました。手先がきれいにみえるようにと日本舞踊、目力を鍛えるためにと習字も習い、苦節13年でやっと二段をいただきました」

 三代目金馬がわかりやすく演じる落語なら、四代目は語り部のような落語。そして五代目は物腰柔らかで明るい芸風だ。

 「僕の落語は人物設定や状況描写が心臓。高座の中でいろんな人物が現れ、その姿が目に浮かんでくる。そして噺が終われば高座には落語家がただ一人というのが理想。落語は料理と同じ。材料は一緒でもそれぞれ違う味があるんですよね」と五代目。

 20年前から金馬を譲り受ける話は何度かあった。四代目が脳梗塞を患った一昨年もその話が出たが、「覚悟して金馬の名前を継いだんだから、墓場まで金馬の看板を担いでいかなきゃダメだよ」と四代目を励まし拒んできた。

 昨春、四代目のおかみさんの節子さんが亡くなると「卒寿(90歳)だから金馬を卒業。金馬の名前を埋もらせないためにも譲りたい」と宣言。

 受け継ぐ五代目は「重い看板を下ろさせてやるのも親孝行かな」と襲名を決意した。

 半世紀以上にわたり名跡を守り続けた四代目。

 「金馬を傷つけまいと稽古をして『金馬、よくやっているよ』って言われるので精いっぱいだったと思うね。先代の『ひとつネタを増やすと前のネタがよくなるんだよ』という言葉がわかりますねぇ」と振り返る。

 五代目は「金馬の名前の大きさも重さも知っているつもりです。(柳家)小三治師匠のところへあいさつにいったとき、『お前はお前の金馬をつくればいいんだから』と言っていただいて楽になりました。包装紙が変わっただけで中身は変わりませんけれど、自分でいろいろと仕込んできたつもりです」と大看板を担ぐ覚悟ができた。

 「ご隠居さんのような気軽な気持ちで、好きな落語を死ぬまでできるのはありがたい。でも三代目の得意ネタ『居酒屋』はできないねぇ」と金翁となる四代目はいまも高座にこだわり続けている。

 ■21日~11月10日「親子ダブル襲名」披露興行

 親子ダブル襲名の披露興行は21~30日(昼席)の上野・鈴本演芸場から始まり、11月10日まで東京都内の各寄席で。金馬がトリを務め、金翁は初日と中日のほか、体調を見ながらの出演となる。

 (ペン・高山和久 カメラ・松井英幸)

 ■三遊亭金馬(さんゆうてい・きんば)。1929年3月19日生まれ、91歳。東京都出身。41年、三代目金馬に入門し金時。45年に二ツ目、小金馬を名乗る。58年に真打昇進し、67年に四代目金馬を襲名。2000年に勲四等瑞宝章。現在、落語協会顧問、日本演芸家連合名誉会長。二代目金翁(きんおう)を襲名する。

 ■三遊亭金時(さんゆうてい・きんとき)1962年11月24日生まれ、57歳。東京都出身。86年、東海大を卒業後、四代目金馬に入門し、金時。89年に二ツ目、98年に真打昇進。2004年に文化庁芸術祭新人賞、05年に国立演芸場花形演芸大賞の金賞を受賞。五代目金馬を襲名する。

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