出典元:夕刊フジ
【マンガ探偵局がゆく】
今回は長年、結末が気になっていた作品を探してほしい、という依頼だ。
「子ども時代の記憶に残っているマンガのことを調べてください。小学校3年生くらいだったと思います。子ども新聞を定期購読している同級生がいて、いつも見せてもらっていたのです。そこには毎日、大好きな石ノ森章太郎さんのマンガが連載されていました。少年少女が世界の悪と戦うストーリーでしたが、学年の途中でその同級生が転校したので続きが読めなくなりました。50年以上結末がずっと気になっています。探してもらえますか?」(永遠の少年・60歳)
永遠の少年さんが小学校3年というと、1967年頃。石ノ森章太郎にとっては月刊誌「COM」に実験マンガ「ジュン」「週刊少年マガジン」に平井和正・原作のSF大作「幻魔大戦」「週刊漫画アクション」にエロチック・アクション「009ノ1」などを連載して、脂が乗り切っていた時期だ。
当時、石ノ森のペンネームだった石森章太郎で新聞連載作品を調べると、67年4月2日から「毎日小学生新聞日曜版」に連載した「アンドロイドV」と同年4月15日から「朝日小学生新聞」に連載した「少年同盟」の2作があった。内容から判断すると「少年同盟」で間違いないだろう。
小学生の風田三郎(サブタン)は下校途中に奇妙なバッジを拾ったことから、イライザと名乗るなぞの少年に洋上の孤島に連れて行かれる。それは、イライザたちが仲間を選ぶために行った抜き打ちテストだった。テストに合格したサブタンは、世界の悪と戦う少年同盟の同志となる。
最初の任務として麻薬密輸団壊滅作戦に参加したサブタンは敵の首領を追い詰めたが…。次々に登場する秘密兵器。二転三転する物語。人間の欲望が導き出す巨大な悪と戦う正義の少年たちという石ノ森マンガの理想主義的側面が現れた作品だ。
もとは62年に月刊誌「少年」に連載された同タイトル作のセルフリメイクだが、新聞連載のために2ページが1回分になるように描き直され、毎日、山場がある構成になっている。つまり、新聞連載小説と同じつくりになっているのだ。しかも、結末が読者投稿で決まるファン参加型だったことも話題になった。
現在は、アマゾン・Kindle版の電子書籍で「少年」連載分ともども読むことができる。
■中野晴行(なかの・はるゆき) 1954年生まれ。フリーライター。京都精華大学マンガ学部客員教授。和歌山大卒業後、銀行勤務を経て編集プロダクションを設立。1993年に『手塚治虫と路地裏のマンガたち』(筑摩書房)で単行本デビュー。『謎のマンガ家・酒井七馬伝』(同)で日本漫画家協会特別賞を受賞。著書多数。