出典元:産経新聞
JR西日本が終電繰り上げに踏み切った背景には、乗客のライフスタイルの変化がある。新型コロナウイルスの感染拡大によって、こうした動きはさらに顕著になりそうだ。
「残業もあって毎日仕事が終わるのが午後11時過ぎ。いつも深夜の最終電車で帰宅しているので繰り上げられたら間に合わない。タクシーで帰ることになるかもしれないけど、お金の面では負担が多い」
大阪市都島区から梅田に通勤している会社員の女性(39)は、ダイヤ改正に声を落とす。
ただJR西によると、最終電車の利用者数は年々減少している。令和元年の午前0時台の大阪、京都、三ノ宮の各駅の利用客数は、平成25年と比べて15%減となった。各企業で働き方改革の風潮が高まり帰宅時間が早まったことが影響しているとみられ、コロナ禍でその傾向がさらに強まっているという。
JR東日本も、新型コロナによる深夜帯の利用客数の落ち込みを受け、来春のダイヤ改正で終電繰り上げを行う方針を発表した。
一方、大阪メトロは今年1月から2月にかけ、夜間の経済活動を活発にするため御堂筋線で約2時間終電を延長する実証実験を計画していたが、感染拡大を受けて途中で中止となった。
大阪府箕面市の会社員の男性(55)は「IT化や働き方改革が進む中で、いい兆候。どんどん変わっていくべきだ」と、終電繰り上げに理解を示す。大阪府和泉市の主婦(64)も「コロナの感染拡大前は、友人と集まるときはいつも梅田まで出て遅くまで飲んでいたので、来春からは終電の時間に気をつけなくちゃ」と笑顔で話した。
りそな総合研究所の荒木秀之主席研究員は「コロナを機に導入され始めたテレワークなどの働き方改革は、ある程度定着するとみられ、深夜の電車の利用客数に今後も影響するだろう」と指摘。「コロナ後は再び訪日客が増える可能性もあり、今回の繰り上げが経済にどう影響するのか、妥当性を改めて検証する必要がある」と話した。