出典元:現代ビジネス
菅義偉首相(71)が誕生した。7年8ヶ月ぶりの首相交代を歓迎する声もある一方で、テレビ界は警戒心を強めている。いくつかの試練が予想されるからだ。
【写真】菅新首相の誕生で、「テレビ業界」はこう変わる…!
菅氏は総務相の経験(2006年9月~2007年8月)があるため、通信・放送政策に人一倍明るい。自民党総裁選以降、デジタル庁創設を提言し始めた背景にもそれがある。デジタル庁はテレビ界には直接関係しないものの、総裁選中にはテレビ界に関わる問題にも触れた。
「携帯電話の電波利用料引き上げについて言及しました」(元テレビ朝日報道局記者で隔月刊誌『放送レポート』編集長の岩崎貞明氏)
電波利用料はテレビ界にも深く関係する。菅首相は「(携帯電話の)電波利用料の見直しはやらざるを得ない」(同)と総裁選中に訴えたが、それが携帯電話に留まるとは考えにくい。年間計約750億円(2019年度)におよぶ電波利用料は、不法電波の監視や電波の研究費などに充てられており、テレビ局のためにも役立てられているからである。
その上、これまでの電波利用料は携帯電話業者の負担が突出していた。このため、携帯電話業者側からは「不公平」との声が上がり続けていた。
例えば携帯大手3社の電波利用料はこうだ。
———-
■ドコモ 約184億1000万円
■KDDI 約114億7000万円
■ソフトバンク 約150億1000万円
———-
一方、テレビ局は次の通り。
———-
■NHK 約25億円
■日本テレビ 約6.6億円
■TBS 約6.4億円
■フジテレビ 約6.3億円
■テレビ朝日 約6.4億円
■テレビ東京 約6.3億円
———-
テレビ局の負担額が抑えられてきたのは公共性が高いとされてきたから。もっとも、今は携帯電話やスマホによって災害情報などを知る人も多く、公共性は甲乙付けがたい。テレビ局だけを特別扱いするのが難しくなっている。それを菅首相が知らぬはずがない。
なにより、電波利用料は次世代通信規格の「5G」の整備にも使われている。これにはテレビ局も関係する。今やテレビ局には動画配信事業が欠かせないからだ。
菅政権は携帯電話料金を4割下げるとしている。実現したら、携帯電話会社の電波利用料の引き上げは見送られるか、逆に下げられるだろう。携帯電話会社の負担があまりにも大きくなるからだ。となると、代わりに電波利用料を背負わなくてはならなくなるのはテレビ界になるはず。
かといって電波利用料が上がったら、テレビ局には痛い。新型コロナ禍により、民放各局の営業利益は約2割も落ちているとされている。
「菅首相は電波利用料の引き上げ問題を使い、通信・放送業界に大きな揺さぶりをかけてくることも予想されます」(前出・岩崎編集長)
テレビ局が菅首相の顔色をうかがわなくてはならない要因の一つとなりそうだ。