出典元:産経新聞
背中にはびっしりと土がついていた。優勝候補最右翼と目された朝乃山が15日、先場所も敗れた照ノ富士の上手投げに屈し3連敗を喫した。
土俵の隅にペタリと座り込んだ後、ぼんやりと花道を下がった。187センチ、174キロの体は小さく縮こまってみえた。白星が遠い。
朝乃山の形だった。左を差し、寄りながら右も差して優位なもろ差しにした。ここで前に出ず、すくい投げを繰り出して流れを手放した。あっさり残され、逆に打たれた上手投げで派手に裏返された。
2日連続で報道陣の取材に応じなかった。土俵下の伊勢ケ浜審判長(元横綱旭富士)は取り口の未熟さを指摘した。「土俵際まで押していったのに投げにいったのが良くない。あそこで強引にでも前に出ればよかった。出し投げでもあればいいが、朝乃山にはない」
両横綱が初日から休場した影響で“最高位”となった重圧が見え隠れする。先場所は白鵬が13日目から休場し、出場力士で最も番付が上になると連敗した。状況は酷似している。先場所の終盤は「目に見えないもの(重圧)があったんじゃないか」と振り返った。両横綱の休場が決まった今場所前は「しっかり引っ張らないといけない」と責任を口にした。地位の重さに、無意識に体を硬くしているのかもしれない。
同じ部屋に関取はおらず出稽古禁止の影響も否定できない。優勝への期待はしぼんだ。誰もが認める横綱候補。どん底で開き直り、白星を重ねるたくましさを見せてほしい。(浜田慎太郎)