早生まれは不利、なのか…? 「生まれ月格差」の驚くべき実態(現代ビジネス)

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出典元:現代ビジネス

小学校の入学式をのぞいてみると、同じ小1同士でもかなりの体格差があることに気がつく。授業参観では、子どもたちの間には言葉の発達の早さにも違いがあるし、「しっかりしている」子とそうでない子の違いも大きいとわかる。こうしたクラス内の子どもたちの心身の発達度合いの差のいくらかは、生まれ月によるものだ。日本の制度では、4月生まれの子が学年内で年長になり、いわゆる早生まれとよばれる1-3月生まれの子どもたちは学年内で年少にあたる。

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 学年内の年齢差が小1の子どもたちにとって大きな差を生み出すのは意外なことではない。しかし、相対年齢、つまり学年内の年齢差が大人になってからも違いを生み出していると聞くと驚く人も多いだろう。

 これまでの様々な研究は、生まれ月による格差は大人になっても完全には消えないことを明らかにしてきた。プロ野球選手やJリーガーのようなスポーツ選手には4月生まれが多く、早生まれが少ないという話は、研究者でなくとも聞いたことはあるだろう。日本全体での出生数には、月による偏りはほとんどないから、生まれ月が有利、不利を生み出していることがわかる。

 (図1)プロ野球選手の生まれ月【出所】スポーツ報知、2020年5月7日

 こうした生まれ月の格差は、プロスポーツ選手ではない私たち一般人にとってもけっして無縁ではない。東京大学の川口大司教授の研究(*1)によると、4-6月生まれと1-3月生まれでは大学進学率が異なるうえ、30代前半の所得には4%もの違いがある。同様に、アメリカでも大企業のCEOや連邦議会議員には、学年内では相対的に年長だった人が多いことが明らかにされている(*2、3)。

 大人になっても生まれ月の格差が完全には消えないのはなぜだろうか。この疑問に対する手がかりを得るべく、筆者は慶應義塾大学の伊藤寛武特任助教、中室牧子教授とともに関東地方のある自治体で行われた調査から得られたデータを分析した(*4)。

 注目したのは学力だけでなく、統制性、自己コントロール、自己効力感といった心理的な特性だ。これらは非認知能力ともよばれ、将来の学業成果や所得などとも関連があることが知られている。また、学力や非認知能力の形成がどのように行われてきたかを理解するために、学習時間、塾や習い事、そして級友や先生との人間関係についても調べている。この私たちの研究について解説するのが本稿の目的だ。

 研究の中身に入る前に、これまでの研究結果を踏まえて私が訴えたいことを明らかにしておきたい。それは、生まれ月による格差はやむを得ないものでも正当なものでもなく、是正すべきということだ。生まれ月の格差は人間が決めた制度によって生じたものであり、人間の手で歪みを正すことができる。完全な解決は難しくとも、格差縮小を目指すべきだ。具体的な解決策については、本稿の終わりで議論したい。

 また、生まれ月格差の存在を知ることで、早生まれの子どもを持つ親御さんの中には不安を抱く方もいるだろう。しかし、生まれ月による差というのは社会全体としての傾向であり、個人差のほうがはるかに大きい。社会の様々な場面で、早生まれの人々は活躍しているし、有名人の中にも身近な人の中にもそうした例を見つけることはできるだろう。

 親としてすべきことは、子どもの適性をしっかりとみきわめて、その子の個性を最大限伸ばすように心がけることだ。気をつけなければいけないのは、身近な他の子どもたちと比べて叱ってしまったり、勉強に追い立てたりすることだ。一学年下の子どもと比べたら大したものだ、と思うぐらいでちょうどよい。子どもの成長を妨げず、良いところを伸ばしていけば、生まれ月による差はいずれ気にならないものになるはずだ。

 本題に戻ろう。私たちの研究では、関東地方のある自治体で行われた調査から得られたデータ4年分を分析している。その自治体の公立学校に通う小4から中3までのすべての子どもたちが対象であり、のべ100万人超の巨大なデータセットを得ることができたため、精度の高い分析ができた。

 まずは学力と年齢の関係について見てみよう。グラフの横軸には年齢を月単位でとっている。グラフの縦軸は算数の学力だ。設計を工夫することで、異なる学年や調査年の間でも、学力テストの結果を比較可能にしてある。この手法は「項目応答理論」という理論にもとづいたもので、TOEICなどでも採用されている。ひとつひとつの点は、生まれ月ごとの平均点だ。学年ごとに記号と色を揃えている。

 
(図2)年齢が上がるにつれて学力は上昇【出所】Yamaguchi, Ito, and Nakamuro (2020)注:縦軸の単位は標準偏差

 図2から明らかなように、年齢が上がるにつれて学力も上昇している。また、中2と中3の違いに見られるように、学年の切れ目で大きく学力が向上する場合もある。

 しかしここで何より注目してほしいのは、学年内の違いだ。どの学年で見ても、年長の子供ほど成績が良い傾向が見られる。小4では最大で偏差値3.5の格差があるが、これは学年が上がるにつれて小さくなり、中3になると最大でも偏差値1.5の格差に抑えられている。ここでは算数・数学の結果を示しているが、国語でも英語でも同様だ。こうした傾向は、世界中で報告されており、研究者の間ではよく知られている。

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