出典元:日経ビジネス
歴史学者である、東北大学大学院経済学研究科の小田中直樹教授が著した、『感染症はぼくらの社会をいかに変えてきたのか ― 世界史のなかの病原体』。
【写真】鈴木健吾(すずき・けんご)氏[ユーグレナ執行役員・研究開発担当]
ポストコロナを予測する材料を世界史の中に探したこの本を、刊行前に読んでもらったのが、バイオベンチャー・ユーグレナ社の創業メンバーの鈴木健吾さん。医学と農学の両博士号を持つ鈴木さんとともに、「科学」を探求する視点から、感染症の「歴史」を振り返ってきたこのシリーズ。
前回、読者から、こんなコメントをいただいた(ありがとうございます)。
「歴史学者の書いた感染症の本を紹介するのに、藻類の専門家にインタビューをして、本の内容にはほとんど触れず、熱力学や数理モデルの話を聞く、…中略…これもエントロピーの増大ですか?」
あまりに話題が拡散しすぎているのではないかと、突っ込みが入ったわけだ。
今回のテーマは「歴史を学ぶ意義」。さらに話題が拡散する。
20世紀の科学史を鮮やかに彩る「アインシュタインとボーアの対話」「神はサイコロを振らない」「シュレーディンガーの猫」……。こんなキーワードの数々が、鈴木さんの目指す「循環型の閉鎖生態系」と、どう関係するのか。
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――これまで、科学の世界に身を置く鈴木さんに、『感染症は、ぼくらの社会をいかに変えてきたか』の第一読者として、感染症の歴史を振り返っていただきました。
が、鈴木さんはそもそも、歴史という科目がお好きでしたか。歴史の本を主体的に読むという経験はありましたか。
●暗記が少ない科目が好き
鈴木:正直なところ、中高生時代、歴史は苦手科目でした。
理系の仲間内では、歴史というのは「覚えゲー(「覚えることを競うゲーム」の意)」ではないか、という話が当時からあって。誤解されたくないのですが、特定の科目をおとしめるつもりはまったくなく、テストで点を取るという意味でいえば、歴史は覚えないことには難しく、逆に覚えればかなり楽になる。その意味で、学問に対する忠誠心が問われる分野、という印象がありました。
――暗記は面倒くさい、ということでしょうか。