出典元:夕刊フジ
巨人は11日、2-1でヤクルトに勝利し、原辰徳監督(62)は球団歴代単独1位となる監督通算1067勝に到達した。V9監督・川上哲治氏の記録を更新し、リーグ連覇に邁進(まいしん)する指揮官は、独走する今季のペナントレースだけでなく名実ともに“神様越え”を果たすつもりだ。 (片岡将)
【写真】ガッツポーズをきめる巨人・原監督
7回まで1-1の同点。8回に均衡を破り、指揮官に未踏の1勝をもたらしたのは、9日の中日戦(ナゴヤドーム)で3本塁打を放って1位タイの1066勝目をプレゼントした坂本勇人内野手(31)の一発。「昔は私が手塩にかけて育てたものだが、今ではこちらが頼っている」とまな弟子に感謝した。
85年を超える巨人の歴史上、最も白星を手にした監督となり「燦然(さんぜん)と輝く神様、川上監督を1つ越えられたことは信じられない気持ちでいっぱい」と感慨深げ。2位阪神とは9・5ゲーム差で貯金「21」。早ければ13日にも優勝マジック「38」が点灯する。
川上氏のまな弟子である藤田元司氏に1980年ドラフトでくじを引いてもらい巨人入りした原監督は同氏から手厚い薫陶を受けた。原監督は川上氏のいわば孫弟子でもある。
V9を達成した川上政権は74年に10連覇を逸し、終焉(しゅうえん)。川上氏は同年にユニホームを脱いだ長嶋茂雄氏(現巨人軍終身名誉監督)に後を任せたが、長嶋政権1年目は球団初の最下位に沈んだ。V9末期には主力は高齢化。出がらし状態のチームとなっていた。長嶋巨人低迷の原因を「ONの後に続く人材の育成を怠った」と川上政権時代に求める意見も多く見られた。
第3次政権で通算14年目を迎えた原監督にその点はぬかりない。秘蔵っ子である坂本を主力に育て上げ、岡本和真内野手(24)を不動の4番として大成させつつある。戸郷翔征投手(20)ら次期エース候補を積極的に抜擢(ばってき)。勝ちながら経験を積ませる好循環で次期政権に譲り渡す戦力整備を進めている。
3年契約の2年目となるが、後進指揮官の育成も同様だ。後継者と見込んだ阿部慎之助(41)を昨季限りで現役引退させると2軍指揮官を任せて帝王学を授けている。巨人史上、2軍監督経験者が1軍の指揮官に就任した例はないが「2軍という組織の長を務めることで、より大きな指導者になれる」と慣例にとらわれず指導者育成も進めている。
「戦いはまだ半ば。浸る余裕はない」と原監督。巨人史上最強の指揮官への道を着々と歩んでいる。