山本恭司 感情揺さぶる大自然、母の死、そしてコロナ… 心で感じる音を込めて ニューアルバム「2020」発売中(夕刊フジ)

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出典元:夕刊フジ

心の深淵に迫る、6本の弦が紡ぎ出すストーリー。3年ぶりのソロアルバムには私小説ともいえる響きが詰まっている。

 「昨年9月の北海道ツアーのとき、釧路湿原をカヌーで下っていて、ものすごい衝撃を受けました。語りかけてくる手つかずの自然があまりにも大きすぎて、人間は何でこんなにちっぽけなんだろうかって。ミュージシャンって何なのか? 衝撃はひかずに、当日のライブはボロボロでした」

 その経験が、アルバムに着手するきっかけになった。ミュージシャンなら、壮大な自然にはやはり“音”で応えるしかない。録音を始めたのは今年1月からだ。

 「何億年も継がれてきた自然への畏怖の念を、歴史を遡る意味で逆回転も取り入れながら、『BILLION YEARS』に込めました。同時に、日本にはこんな美しいところもあるよって。昨年の10月に大好きな沖縄の首里城が焼け落ちてしまったこともショックで、その時点では今ある日本の美しさ、素晴らしさを伝える作品をつくろうと思っていました」

 しかし、1月の終わりくらいから事態は急変していく。

 「コロナの発生、肉親の死もありました。この1年、釧路での体験も含めて、僕の周囲で起こったいろいろなことに感情を揺さぶられて、表現したいという気持ちに変わっていったんです」

 SF的な要素が多かったこれまでのアルバムとは違い、新作はいわば“ノンフィクション”へ。

 「宇宙を想像したり、イマジネーションのなかでの曲づくりが多かったんですが、今回は自分に起きたことがテーマ。同じような気持ちの人もいるはずだし、今年起こったことは世界中の誰もが忘れず、歴史にずっと残る。だから、タイトルは『2020』。心で感じてもらえればうれしい」

 常に支えてくれていた愛する母、春江さんが97年の生涯を閉じたのは2月8日のことだ。

 「『PRAYERS』を母に捧げました。1月に具合が悪くなってきたときにつくり始めて、お見舞いで松江に日帰りした2月5日の夜、自宅でギターを入れました。母と会話しているのか、僕が自分の思いを語っているのか、ギターが僕を慰めてくれているのか、言葉を使わない言葉がそこにはありました」

 コロナは当初、多くの人が“大丈夫”と思っていた。しかし一気に威力を増し、年間100本以上をこなす“ライブ”ミュージシャンにも自粛の波が押し寄せてきた。

 「4月から6月の間はほとんど自宅から出ていません。“決して明けない夜はないから”という思いを伝えるために、3月にデモテープを作り、それが『HYMN OF MUSIC LOVERS』になりました。会場でみんなが大合唱できるような曲です」

 そして、これからは“ライブ”という翼を取り戻しにいく。

 自粛期間中は「アルバムに集中できた」ことはあるものの、リアルな音はファンに伝えられなかった。無観客の生配信を行うアーティストもいたが、「生配信はクォリティ的に問題が多いと思うし、納得がいくものはできにくいでしょう」と、ひたすらライブ復活にかけてきた。願いがかなったのは7月4日。群馬県館林での「弾き語り・弾きまくりギター三昧」には気持ちのいい感動しかなかった。

 「待ってくれていたお客さんたちがみんな泣いているのを見て、僕も泣いてしまった。そして最後は笑顔。いろいろな事情で来れない人もいましたが、一歩を踏み出してきてくれた人は『あぁ、やっぱり来て良かった』と喜んでくれました。たまっていたものがあったんでしょう。改めて、音楽は心も体も元気にしてくれると思いました」

 2021年は、ハタチでのBOWWOWのデビューから45年。できることなら全面解禁となったステージに立ちたい。

 「去年のミッキーさんとの夕刊フジ・ロックフェス(『ミッキー吉野 Half Century』ライブ)もすごく楽しかったですね。今年飛んでしまったイベントも多いし、45周年は何をやろうかな。そう、明けない夜はありません」

 世界が“通常”に戻る時を待ちながら、ギターを弾き続ける。

 (ペン・秋谷哲)

 ■山本恭司(やまもと・きょうじ) 1956年3月23日生まれ、島根県松江市出身。64歳。18歳でヤマハ・ネム音楽院に入学し、在学中の75年にBOWWOW結成、翌年にアルバム・デビュー。欧米で公演するなど世界中で人気を集めた。80年に初のソロ。83年にBOWWOWを解散し、84年にVOW WOWを結成し86年に渡英(90年解散)。現在はソロで全国を巡る傍ら、高校時代からの親友である俳優の佐野史郎ともコラボ。他ミュージシャンとの共演も多い。

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