菅新総裁 批判恐れず内政で「大ナタ」を 編集局次長兼政治部長 佐々木美恵(産経新聞)

出典元:産経新聞

次期首相となる自民党総裁に菅義偉官房長官が選出された。新型コロナウイルス禍で社会が変容を余儀なくされ、経済がリーマン・ショック時より悪化するという危機下での緊急登板である。

 菅氏の政治手法は元来、前例主義にとらわれず制度を変えていくスタイルにある。総務相時代に発案した「ふるさと納税」やNHKに対する拉致問題での命令放送がその例だ。いずれもバッシングや反対を押し切って実現させた。官房長官としても東南アジア各国に対するビザ(査証)発給の緩和など観光産業の拡大で地方経済を潤すことを目指した。

 総務相時代のインタビューで、政治の師と仰いだ梶山静六元官房長官から「これからは政策を掲げて政権をつくる時代だ」「お前の仕事は国民の食い扶持(ぶち)を探すことだ。稼げるやつ(産業)をつくれ」という2つを遺言として託されたと語った。時代の変化に合わせて行政の縦割りを排し、消費を活性化するという政治信条はこの頃から変わっていない。内政においては、批判を恐れず存分に大ナタを振るってほしい。

 さらに菅氏に大きな期待を寄せたいのは拉致問題の解決だ。担当相に就く以前から取り組み、平成16年6月成立の北朝鮮の対日工作に使われていた貨客船「万景峰(マンギョンボン)92」の入港を禁止する「特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法」のため奔走した。安倍晋三首相との関係は同法がきっかけでもあった。米国と連携を強め、早期解決の道を開くことが望まれる。

 菅氏は総裁選の討論などを通じ、日米同盟を基軸として外交・安全保障政策を推進すると強調した。米中対立の中で、日本の対中戦略をいかに展開するか。中国は尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺海域で現状変更の野心を隠さない。日本の領土を守るため島嶼(とうしょ)防衛の強化など具体的な措置を取ると同時に、国際世論を主導することも必要となる。

 「政界のご意見番」で知られた陽明学者、安岡正篤(まさひろ)は「政治の要訣(ようけつ)は結局人を知り、人を用うるの一点に帰する」(「東洋宰相学」)と説いた。菅氏の強みは人脈や情報収集力にある。外交においても、また、自民党の党是で安倍首相の悲願でもあった憲法改正の実現に向けても人材を起用し、大局から決断を下し前に進めてもらいたい。

 最優先で取り組むとしているコロナ対策も難しい課題だ。専門家は第2波のピークは7月末と分析するが、いまだワクチンや治療薬は開発途上だ。ウイルスの特性も解明されていない。感染防止と経済を両立させる困難さは言うまでもない。任期満了まで1年余となった衆院の解散判断も縛っている。これまで以上に研究成果やデータを示し、広く理解を求めることが肝要だ。

 菅氏は14日の新総裁就任の記者会見で「専門家が下火になってきたというまでは難しい。悩ましい」と述べた。しかし、外交・安全保障、憲法改正など国家の方向を問う局面には果断に信を問うべきだろう。

【広告】

Doresuwe



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です