出典元:産経新聞
2年ぶりに全米オープン決勝の舞台に戻ってきた世界ランキング9位の大坂なおみ(日清食品)は、同27位のビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)との対決を制し、19年の全豪オープン以来となる四大大会3度目の頂点に立った。
新型コロナウイルスの影響で、今年1月開幕の全豪以来の四大大会。1992年バルセロナ五輪代表の遠藤愛氏(自己最高世界ランキング26位)が着目したのは、鍛え上げられた大坂の下半身だ。「初戦から一貫して動きにキレが出ていた。(自粛期間中も)集中してトレーニングを積んでいたのでしょう」と指摘する。
例えば、相手の厳しいショットに対して左右に走らされても、全く態勢を崩さず、打ち返す際にはグッと腰を落として豪打を放つ。相手にとっては、この守備から攻撃への切り替えの速さが脅威で、遠藤氏は「穴がない。攻めるところがないといった印象」と話す。
テニスは実力だけでなく、対戦相手との相性や精神状態も勝敗を分ける。大坂は、2年前の全米で四大大会初優勝、続く全豪も制して一躍、世界のトップに躍り出たものの、その後は重圧に苦しんだ。19年7月のウィンブルドン選手権で初戦敗退を経験し、前回の全米は4回戦止まり。今年2月には2桁順位へと後退していた。
そんな大坂はコロナ期間中に精神を安定させ、本来の自分を取り戻したと言っていい。今大会を、一時は影を潜めた圧倒的な勢いと破壊力で勝ち上がり、かつて見られたコート上で感情をあらわにする場面も、ほとんどなかった。
女子はトップ10のうち6人が欠場していた。それでも勝ち星を重ねて再び四大大会の頂点に立った喜びは、今後の自信と余裕を生み出すだろう。日本のエースは精神面でも熟しつつある。